2020年06月23日
屋根塗装で実施する縁切りとは何
屋根材がスレート瓦の場合、ローラー等で屋根塗装を実施する際に屋根材と屋根材の重なる部分に塗料が入り込み、そのまま乾燥すると塞がった状態になってしまいます。その塞がった状態を防ぐ為に、屋根材と屋根材の隙間の塗料(塗膜)を切り離して雨水の通り道を確保する作業を「縁切り」といいます。
作業としてはヘラやカッターを使って一つひとつ切り離していく工法と、タスペーサーを入れる工法があります。
新築後1回目の塗装では、繋ぎ目の隙間が十分にあり、縁切りする必要は基本ありません。主に2回目以降の屋根で、繋ぎ目の隙間に前回までの塗料が残っていて、そこに塗装をすると隙間が埋まってしまうような場合に「縁切り」が必要になります。
縁切りが必要な理由
建物の屋根に雨が降った場合、雨水はスレート瓦の隙間の外に出ることで屋根の内部に水が溜まらない構造となっています。
しかし本来、屋根材と屋根材の隙間から外に出るはずの水が、塗料(塗膜)で塞がっていることで、その隙間から毛細管現象で屋根材の中に雨水が入り込んでしまうことがあります。そうするとスレート瓦を伝って屋根内部に雨水が浸透してしまい、雨漏りなどを引き起こす原因となり、野地板などの木材を腐らせてしまうことにつながります。
また雨漏りしているかどうか、症状がわかりにくく気が付かないことも多くあります。重症になってから気が付くと補修も大変になります。
縁切りは一つひとつの屋根材と屋根材の隙間を確認し、塞がっている重なりを丁寧に切っていく作業の為、大変手間がかかる工程となりますが、実施しないと住まいや建物に与える影響が大きい作業工程といえます。
縁切りの工法は2つ
従来の一つひとつ切り離していく工法とタスペーサー工法の2種類の工法がありますが、主流はタスペーサー工法です。
従来の縁切り工法
金属のヘラ(エスパッター)やカッター等を使い、塗料が固まった後に屋根材と屋根材の隙間をつくって(切って)いきます。
一つひとつ隙間を確認しながらの作業が必要で、見落としたり、丁寧に切り込みを入れなかった場合、削った場所がカッター等で傷んでしまうこともあります。また塗装後の屋根の上での作業になるので汚れる可能性もあります。
タスペーサー工法
現在タスペーサー工法は施工性が高い為、主流になっています。下塗り、上塗りの間に1枚の屋根材に対して、15cm間隔で2つタスペーサーを挿入していきます(ダブル工法と呼ばれていますが、屋根形状によって異なります)。仕上がった屋根に登らなくてよいので傷つける恐れがなくなります。またカッター等で切る従来の縁切りは必要なく設置のみの作業の為、従来の縁切り工法よりも工期短縮につながります。ただし屋根の形状や規模、コスト節約などを理由に、従来の縁切りをする場合もあります。
一般的な施工手順
高圧洗浄・下地調整
↓
下塗り(シーラーなど)
↓
タスペーサーを挿入
↓
中塗り・上塗り
タスペーサーの挿入は、屋根に4mm以上の隙間がある場合は必要ありません。4mm以上の隙間がある場合、固定されず設置できません。
また一つの建物で、すべての屋根にタスペーサーの設置が必要ではありません。隙間の空いてくる(屋根材が反ってくる)ような紫外線の多く当たる方法の屋根は、必要ないと判断する場合もあります。
そもそも「タスペーサー」とは何?
タスペーサーとは、株式会社セイムが販売する「縁切り」の工程で使う商品の名称です。
2017年春発売した最新型のタスペーサー01では、水が上がりにくい形状を採用、雨水のキレも向上しています。新しい形状に変更され、タスペーサー本体のバネ性能が向上し、より良い通気が可能となっています。さらに素材も見直しされ、溶剤をより強いものに変更しています(耐溶剤性向上も実験により検証済)。60kg~80kgの加重を掛けても破損しにくく、屋根材に優しく取り扱いもしやすい商品となっています。
従来の工法での作業時間も大幅短縮されており、「初めての塗り替えの場合、100㎡の屋根なら約2時間で終了」と記載されています。長期的に下地への通気性を確保できます。
縁切りを実施しなかったことによるトラブル
縁切りは必須の工程にもかかわらず、されていないケースは珍しくありません。手間のかかる作業なので施工時間が多くかかる為、その手間の時間をあらかじめ見越して工期を組み、見積にも反映させる必要がありますが見落とされることがあります。
また屋根工事の為、直接目にする機会が少ないこともトラブルの理由の一つに挙げられます。
面倒な作業と考えて実施しない業者は基本的にはいませんが、一つひとつ丁寧に確認し実施していく作業の為、見落としが発生しないようにチェックアンドチェックで進める必要があります。
トラブルを回避するために
見積と工程に反映されているか
現地調査後の見積の説明の際に、しっかりと縁切りの工程と工事が含まれているか確認し、書面に記載をお願いすることをおすすめします。
見積にタスペーサーの項目がない場合は、従来の工法になりますのでタスペーサーの高項目有無だけでは、わからないので注意が必要です
工事完了後の報告書の提出
工事完了後に、きちんと「縁切り」したか、またはタスペーサーを挿入したか、写真付きの報告書提出をお願いして確認することをおすすめします。直接屋根の上で確認することは危険ですので、写真をしっかりと提出してくれるリフォーム会社を選ぶことが必要です。
縁切りされていないことがわかったなら
屋根と屋根裏の状態を確認し、雨漏りやその前兆がないか確認します。
ご自身の目で確認するのは危険ですので、リフォーム会社・塗装会社に相談することをおすすめします。
まとめ
縁切りとは、屋根材と屋根材の塗膜を切断し、雨水の通り道を確保する作業をいいます。
現在はタスペーサーの工法が多く採用されていますが、規模やコストによって従来の縁切りを行うこともあります。
縁切りしないと、水が屋根に溜まっている状態になりやすくなり、雨漏りにつながります。
特に2回目以降の屋根塗装で必要になります。
屋根塗装の検討の際には「縁切り」についてリフォーム会社、塗装業者に確認し、今心配な方も相談することをおすすめします。
縁切りが必要となったら、タスペーサーでの施工が必須かどうか、確認を。
屋根塗装の場合、タスペーサーありきの説明をするリフォーム会社もあるかとおもいますが、普通に縁切りを実施するのであれば、同じ効果が得られますので
お見積りを取った業者にタスペーサーが本当に必要かどうか確認する事をおすすめします。